植物たちが無数の葉を広げ、陽射しを求めてそれを拾おうとしている。
魚たちは透過する陽光を反射し、水中に溶け込もうとしている。
そして一匹の石亀が石の上で手足を浮かし甲羅を干している。
全てのものに陽は燦々と降り注ぐ。
自然において至極当然な営みである。
人間にとっては、降り注ぐ陽の光は「輝き」そのものであり、
「輝き」に満たされるという美の記憶といえるかもしれない。
また、複雑な現代社会に生きる私達にとって
それは時に「休息」や「励まし」にもなる。
それがたとえ微かな木漏れ日のようなものであっても、
人は温かな記憶として大切に心に留めて生きているに違いない。
今回の展覧会では、天空の雲の上に、大海原の水中に、水面の波に、山々の木々に、滝の飛沫の中に陽の光が降り注ぎます。
実際に使われていた和菓子の木型と、伝統的な手漉きで作られる和紙〈西の内紙〉を使った永田哲也氏の「和菓紙」アートの世界。
日本各地から集められた様々な時代の祝いの形と、光を透かして白く温かく輝く和紙の質感で表現されるアート作品が、見る人の心に刻まれた記憶を呼び覚まします。