長年、AERAの表紙写真を担当し、ポートレートで知られる写真家・坂田栄一郎。
今展では動植物を含めた自然や風景を撮った作品を展示します。
現代の地球や社会を ”STORMY WEATHER” だと捉えながら「どうすればより良い社会を構築できるのか?」というポジティブな心情から制作され、坂田の新たな一面として大きな反響を呼んだ作品です。
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Stormy Weather
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樹木には幸せが宿っているものと、悪霊が宿っているものがある。そんな話を友人から聞いたことがある。
私には、その違いを判別することは出来ないが、木に体をあずけると安らぎを感じる。木の精霊が体を癒してくれるのだろう。時々、自然の中でそういう行為をしている人を見かけることがある。
樹木には何か不思議なパワーがあることは確かだ。一粒の種から高さ何十メートルにもなる大きな木に育つわけだから、その生命力は驚異といっていい。
夏の香りを含んださわやかな風が、青葉の上を吹き渡るころになると、木の精はますます活気をおび、踊りだす。木が発散するエネルギーが心を癒し、活力を与えてくれるに違いない。
十五年ほど前、ヨーロッパを旅した時、若いコックさんが胸元に本を抱えたまま、大きな木の下で、木漏れ日の中、気持ちよさそうに眠っていた光景を未だに憶えている。近頃、あんな長閑な光景を目にすることは少ない。
自然とともに生きてきた人間は、いつからか、より快適で、より便利な暮らしを求めるようになった。人工の自然を取り入れた都市型生活スタイルは、自然にも徐々に変化をもたらしていく。
あらゆる生物が調和しあって生きている地球は、今や沢山の問題を抱えている。地球温暖化、温室効果による異常気象、森林破壊など、それぞれに起因する種の絶滅や食料危機。放射能汚染や核戦争による生命の絶滅も危惧されている。
我々の住む地球は、ストレスで満ち溢れている。理不尽なことの多い社会は、決して住み心地が良いとは言えない。
人は、これまで素晴らしい文明社会を築いてきた。心に眠る叡智を目覚めさせ、世界観を少し変えれば、未来は平和な社会へと変遷していくだろう。
いまこそ、Share Happiness!
今日はStormy Weather。でも、きっと明日は快晴。
坂田栄一郎