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平野淳子 個展 ゲニウスロキ [国立競技場]
7月15日(木)→7月21日(水)

ゲニウスロキとは「土地の精霊」「地霊」と訳される、文化的・歴史的・社会的な土地の可能性を示す概念である。
平野は、この概念を「時空を超えてその土地の記憶に思いを馳せる事」と捉えた。
「土地の記憶というものは、消そうと思ってもどこかにその性質を残してしまう。後の人が変えようとしても、目に見えない何かが残って、湿気や風や匂いになって漂っているような気がする。」と語る。
青山練兵場、学徒動員壮行会、先のオリンピックなど数々の歴史を刻んできた土地に建ち上がった国立競技場は、47都道府県全ての樹々を使っているという。もともと明治神宮の杜は日本中から集められた樹々によって創られた場所でもあり、これらの歴史を踏まえて建てられた競技場は、まさに、土地の記憶、ゲニウスロキを体現している。
今展の作品は、これらの史実に注目し、歴史の目撃者である樹々やサンクチュアリを飛び交う鳥たちをキーワードにして制作されている。作品制作にあたっては、薄さや風合いの違う和紙を使って裏打ちで日本画のように、また写真のレイヤーのように重ねていく事でデジタルと古典的技法の融合を試みた。そこには記憶の重なりとともに古典的な技法から現在の技法まで折り込まれており、一見単調になりがちなモノクロームの画面の中には重層的に繊細な色や表現が立ち現れている。
国立競技場の地が持つ記憶を、重厚且つ研ぎ澄まされた技法で表現した、平野淳子の新しい芸術を是非ご堪能いただきたい。