菊地は「SPECTRUM(スペクトラム)」をテーマに絵画作品を制作している。これは分散光という意味で、様々な素材や文化を横断しながら多様なバラツキを絵画の平面上に等価値に扱う制作態度と重なるところから用いている言葉だ。絵具の他に紙やコルクなど、耐久性や発色を長期間検証した材料を用いた作品は、軽やかな印象でありながら堅牢な画面が特徴である。その平面的な捉え方を用いた色彩感覚は秀逸で、画面の外へ広がっていく無限の連続性を感じる。現代の混沌とした情勢の中、描かれた「モノ」を通じ、我々は人や国家、更には宇宙にまで思いを馳せるのである。