

Untitled 2025年
Untitled 2025年
Untitled 2025年
Untitled 2025年私の作品世界は、人生の晩年を迎えつつある私自身の内的経験と神秘的な体験に深く結びついています。それは有る山岳仰宗教の家に生まれたことによるのかも知りません。70歳を目前にして表現したい主題は、「境界」という概念であります。これは単に生と死の狭間を指すのではなく、昼と夜、季節の移ろい、人の営みの節目といった、あらゆる「限界」と「生成」の瞬間に通底する普遍的なテーマです。
幼少期から絵を描いて自信を表現することを日常としてきましたが、大学卒業後は画廊勤務を経て事業の世界へと歩みを進めました。画業から離れた年月は長かったですが、その経験は「美術を社会のなかでどう機能させるか」という視点を培わせました。多様な事業を手かけたのち、いま再び筆を執るに至ったことは、単なる回帰ではなく、むしろ長い迂回を経たうえでの新しい出発であると考えています。それはつまり、私の本来の姿であり、生きることの証でもあります。
私の作品の核にあるのは「境界に立ち現れる光」であります。画面に描かれるのは、現実と非現実、在るものと失われゆくものの接点であり、そこに漂う一瞬のきらめきであります。それは西洋哲学における「時間性」としての存在を想起させると同時に、東洋的な「無」や「場所」といった思索とも響き合います。私はその曖味な瞬間を、抽象的でありながらも、感覚的に触れられるイメージとして、たとえば、説明したいけれど説明できない表現ができればと願っています。
重要なのは、私の作品が自己完結せず、常に観る者との関係性を志向している点であります。作品がひとたび他者の視線にさらされる時、そこには共鳴や対話が生まれます。それは解釈の差異すらも、作品の生を延命させる契機となります。過去・今・未来のどこかの「点」で、作品の表現が意味を持つ「光」となれば幸いです。
――MIU(三浦利雄)
★作品に関するお問い合わせはこちら
🔷MIU(三浦利雄)
1958 年 大阪市生まれ
※本展最終日、12月31日(水)は16:00で閉場いたします。