

「Portrait no.85」116.7×116.7×6cm Acrylic on canvas
「Portrait no.86」72.7×72.7×6cm Acrylic on canvas
「Portrait no.87」72.7×72.7×6cm Acrylic on canvas
「Portrait no.88」72.7×72.7×6cm Acrylic on canvas
本展は、「記憶の分解と再構築」を主題に、断片(fragment)、揺らぎ(blur)、残存(remain)という要素を軸に構成されています。記憶は決して完全な形で保存されるものではなく、欠片として立ち上がり、その一部分に感情や愛着を宿しながら、時間のずれや曖昧さを伴って層状に積み重なっていきます。
野澤梓の絵画において、像は固定された輪郭や明確な意味を持つ存在としてではなく、消えかけ、重なり合い、部分的に欠落した痕跡として現れます。描かれる人物像は特定の物語や主体を指し示すものではなく、記憶の中に残る気配や残像として画面に留まり続けています。そこには喪失の感触と同時に、なお「残っている」ものへの静かな眼差しが感じられます。
線と面、境界と空白を等価に扱う造形的態度は、形の輪郭を不確かなものとし、存在の境界そのものを揺るがします。境界であるはずの線は空白として現れ、あるいは周囲の面に溶け込みながら、固定されたアイデンティティから解放された存在のあり方を浮かび上がらせます。背景は単なる余白ではなく、記憶が沈殿し、時間が堆積する「場」として機能し、静かな哀しみと微かな希望が共存する空間を形成しています。
本展に並ぶ作品群では、野澤がこれまでも用いてきた〈スティッカーボム〉の表現にあらためて立ち返り、断片的なイメージを集積する制作の方法が見られます。ただしそれは技法の提示そのものを目的とするものではなく、記憶が立ち上がり、揺らぎ、なお留まり続けるその運動を可視化するための構造として機能しています。《Still Fragment》は、消えかけながらも確かに「まだここにあるもの」に目を凝らし、鑑賞者自身の記憶と静かに向き合うための場となるでしょう。
本年 3 月に 2 年ぶりの開催した個展「Still Fragment」の第二章として開催する本展は、より多くの方々に手に取っていただけるように小さい作品も多数ご用意しました。
ぜひご高覧いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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🔶野澤梓
「消えかけた感情の痕跡を描いている。」
記憶や知覚、存在感覚が絶えず揺らぎ続ける現代において、描く、削る、滲ませる、覆い隠す、再び描き直すと、描画と消去を反復する独自のレイヤー構造によって、曖昧で断片化された感覚や曖昧な痕跡を画面上に留めようとしている。
近年は東京を中心に個展を開催するほか、香港、台北、パリなど国内外で作品を発表。作品は東京、香港、台北、上海、ロンドン、パリ、バルセロナ、ボストンなどの個人コレクションに収蔵されている。
1994年静岡県生まれ。
2019年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。現在東京を拠点に活動。